「ローズトゥロードリプレイ ソングシーカー 失われた歌を求めて」(以下ローズ)と「ゲヘナAnリプレイ5 アザゼルテンプテーション 王女と獄と放浪者たち」(以下、ゲヘナAn)をできるだけ客観的に比較してみようと思います。
結局、DXオリジン・リプレイの3巻が入手できませんでした(笑)。もしかしたらゲヘナではなく六門世界リプレイWと比較するのがいいのかもしれないけど。
●GM
ゲヘナAn:秋口ぎぐる/SNE所属の作家。リプレイのライティングは3冊目(多分)。
ローズ:小林正親/フリーのライター。元遊演体とか。
GMキャリアで言うと、年齢も上で各地のコンベに参加する小林に一日の長があると思うが、SNE所属なので身内プレイが多そうなのが秋口の方か(裏づけのない推論)。個人名義で出版数が多いのは富士見で賞を獲ってる秋口。個人的には両者共に、いじられ系の印象を受ける。
ちなみに、ローズは途中一時的にGMが交代していることを付記しておく。
●PL
ゲヘナAn:会話から察するに全員SNE社員。PL数4人。
ローズ:某専門学校生徒でTRPG初心者。鈴木銀一郎除く。PL数5〜6人。
PLのTRPGへの習熟度は圧倒的にゲヘナAn。ただしローズは前提として、初心者相手の企画となっている(8人から選抜された4人)。
●ページ構成他
ゲヘナAn:文庫版。1ページあたり17行で、ゲヘナAnは40字程度。総ページ約300ページ。税込み882円。
ローズ:新書版。1ページあたり17行で、1行あたり45字程度。総ページ約350ページ。税込み998円。
ほぼ共通のフォーマットであるが、ゲヘナAnはキャラシートの掲載してあり、データを参照しやすい。そしてローズはページ下部が余白で、用語解説などが入る構成である。また行間は圧倒的にローズが大きく1行分くらい空いており、個人的に読みやすく感じる。
●台詞と文章
ゲヘナAn:今風に(笑)や(汗)が多用されている。しかし各PCは読者を意識してか、いちいち解説的な台詞を発言することが多く、場面の状況や思惑をイメージしやすい。
ローズ:(耳に手を当てて)や(念を込めて)とかPLの状態を具体的に表現しており、台詞は口語調である。また印象的な台詞や単語が太字で強調されている。
出版にあたり、どの程度実プレイに加筆しているかは不明だが、台詞のやり取りの前提として、PLの習熟度や性格が如実に出ているのが普通だ。具体的に言えば、ゲヘナAnのPLはプロであり、ローズのPLは初心者だが声優・俳優の卵であること。
●加筆〜小説的進行
ローズ及びゲヘナAn共に、場面転換の際に小説形式の解説文が入る。
ゲヘナAn:主人公(イウサール)の一人称。小説家である秋口ぎぐるの本領発揮か。一人称でありながらも、ルールの解説を重視した丁寧な表現が多用されており、ルール面では理解しやすい文章。が、少しくどい。
ローズ:基本的には三人称であり、端的で雰囲気重視の表現が多い。小林も演出関係に携わっていたこともあり、叙情的で感情移入しやすい文章。が、少しけれんが強い。
●シナリオ
ゲヘナAn:旧ゲヘナと新ゲヘナ(An)を繋ぐシナリオ。
ローズ:旧ローズとBローズを繋ぐシナリオ。
奇しくも両作品共に、ゲーム世界の歴史を左右した重要なシナリオとなっている。
ただしその実際的な関わり度合ではローズのほうが濃く、シナリオ終了時のカタルシスが大きい。ゲヘナAnはアザゼルという狂言回しがいるが、扱いでいえば一介の冒険者どまりになっている。
以上、比較できそうな要素を抜き出して論じてみた。
総じて両作品は作りや構成が似ている。似ているがゆえ、各作品を面白いと思うか否かは個人の趣向次第だと思う。ただし読みやすさは圧倒的にローズではある。
以下はどうでもいい僕個人の意見。
ローズのほうがTRPGらしさが顕著に出ていて面白い。テンポも良くさくさく読める(編集=省略が上手い)。初心者PLのビルドゥングロマンスとして読めることも、リプレイとしては斬新な視点だ(FEARにも同様のものがあるが、ローズは全員が初心者だ)。
読んで受けるGMの印象は大人気ない(笑)、だがでしゃばらずPLの判断に任せ、それを面白く転がしていくマスタリングとライティングはさすがといったところ。しかし小林がウザイと感じる場面も多々。
ゲヘナAnはNPCが幅を利かせすぎていて残念。またPCの態度がおちゃらけなのにプレイが半端に世界設定に関るシナリオでそこに温度差を感じる。いっそ股旅物テイストにしてもよかったような。
商業リプレイとして成立させる以上、売りというか突き抜けた要素が必要だと思うんだが、全般的に中途半端。なんか最近のSWやユエルのリプレイを読んでも似たような印象を受ける、惰性感と言おうか……じっくり考察したいポイントではありますね。
2006年03月28日
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